墜落世界キャンペーンプレイレポート 第1話「旗揚げ」

先日遊んだ墜落世界のキャンペーン第1話のプレイレポートだよ。参加した哀れなPCは以下の6人。


カンパニー名:『ハエトリグサ引越しセンター』

【社員】
ハエトリグサ男爵(貴族/資材部/男/社長)
物品運搬に浪漫を見出し、他の貴族連中に変人扱いされる中、カンパニーを設立した浪漫溢れる男。一人称が「麿」でおじゃる口調。

トリウム=アメリシウム(欠族/技術部/男)
幼い頃から星空に憧れ、「自分はいつかあの空に帰るのだ」という妄想を持っているため、目的のために回収アイテムを“自分なりに”解析したいと思っている変人。

歯車童子13号(擬人/保安部/女)
シュレッダーとして生産された擬人。自己のアイデンティティを見つけるために役目から逃げ、回収業に就く。酸素袋による2回行動と両手の裁断刃と牙刃を使った脅威の8回攻撃を繰り出す、前線の要。

カツオ(人畜/厚生部/性別不明)
墜落地帯をうろうろしていた所を花猫に拾われた人畜。三本腕という当たり変異を引いたため、地味に攻撃力がある。PLがアイテム・資金管理を担当しており、頭の中に中の人がいるともっぱらの噂である。

花猫(獣族/保安部/女)
夢と浪漫を求めて回収業者になってみた三毛猫の獣族。カツオ(人畜)の飼い主。猫液と呼ばれる体液を吐く。今回はPLが不参加のため、NPC

ヒルッチ(蛭船/性別不明)
ハエトリグサ男爵のペットであるNPCの蛭船。「ヒルッチー」と鳴く。前線でZOCを発生させるのが主な役目。



第三壁街*1。兵器研究の大家、「金剛」カーボ家が支配する地域。その壁街の上部には墜落地帯からの脅威を退けるための大口径主砲が備え付けており、住人の安心と恐怖の象徴となっている。壁街中層には兵器が大量に市場に溢れ、第三壁街はさながら火薬庫の様であった。
その壁街中層の道の隅っこに、ハエトリグサ男爵以下5名と1匹はたむろっていた。事務所代わりの資産*2である「路地の窟」すらも持っていない彼らには、道に座り込む以外の集合手段は無かった。
「それでは、ここに、独立系回収業会社『ハエトリグサ引越しセンター』を立ち上げるでおじゃるー!」
オー、という掛け声とともに、今ここにまた1つ、命を売り物にして生きる無謀な集団が生まれたのだった。


「とにかくまずは墜落船を買い取るでおじゃる。これ回収業者の基本でおじゃるよ」
そう言って訪れたのは、墜落船回収業者組合の運営する、墜落船市場である。奥の方では大勢の人が墜落地帯の地図を前に競りを行っている。ざわ・・・ざわ・・・というどこかで見た擬音の中から、1000EU、2000EU*3といった声が聞こえてくる。当然出来たてのカンパニーにはそんな高価な船は手が出せないので、手前の受付に声をかける。受付に座っているのは、頭部が蛸の形をした水族の男性だった。
「こんにちはでおじゃる。麿たちは独立系回収業者で、墜落船を買いたいのでおじゃるが」
「そうか。見たこと無い顔だな。新顔か?俺はここの独立系回収業者専門受付担当の縷々家(るるいえ)だ。」
「るるいえ」という名前に色めきだつ一行。
「何者だこいつ!?眷属か何かか!?」
「いや、多分雰囲気でつけた名前でおじゃろう・・・」
「・・・オマエラ、俺の名前が何か問題でも?」
「い、いや、そんな事はないでおじゃるよ?」
「余計な事は気にしない事にしよう。それが長生きするコツだ」


「で、船を買いに来たんだったな」
「そ、そうでおじゃった。良い船は今あるでおじゃるか?」
「おう、今売り出し中の船はこんなもんだな」
そう言って墜落地帯の地図を見せられる。


「この『龍の巣』というのはなんだい?」
「ああ、そりゃあ屑竜*4が住み着いちまった船だ。組合も回収不可能と判断したんで放っておかれてるから、行きたきゃ勝手に行きな」
「いや、自殺願望は無いから結構です」
「『スターフィッシュ252』がお手頃ではあるが・・・」
「遠いでおじゃるね。遠いと死の危険が跳ね上がるでおじゃるからなぁ・・・」
「他の2つの宇宙船はどっちも名前が怖いし」
「『ボンバーヘッド』とか入っただけで死ねるでおじゃるよきっと」
「それよりは『リローデッド』の方がマシですかね・・・」
「これらの船について、何か追加情報はありませんか縷々家氏」
「そうだな・・・、『リローデッド』と『スターフィッシュ252』は墜落時の破損が激しくて、小規模しか残っていない。『ボンバーヘッド』はそれよりもう少し大きいな。赤く点滅を繰り返してるって話だ」
「『ボンバーヘッド』は無しでおじゃるな(即答)」
「そうですね」
結局金額的にも距離的にも規模的にもちょうどいいと思われる、『リローデッド』を買い取った。大抵の独立系回収業者は、墜落船を買い取る資金など持っていない。そのため、組合に借金をして船を買い取る。借金の期限は一週間。それを過ぎると適正科学協会*5が作り出した最強の人畜、経済制裁部隊がやって来て殺される。常に首に縄がかかった状態で回収業を行うのが、独立系回収業者なのだ。
「じゃあこれが回収許可証だ。これを無くすと、その船で見つけた物品全てを回収する権利を失うから、無くさないようにしろよ。」
そう言って縷々家は、A5くらいの大きさのプラカードを渡した。「回収許可証 船名:リローデッド 墜落位置:フィールド3-2」と書いてある。これがカンパニーの命を繋ぎ止めている、唯一の物品。


1050週*6 1日目 フィールド3-1*7
かくて『ハエトリグサ引越しセンター』は、墜落地帯に足を踏み入れた。目指すは『リローデッド』のあるフィールド3-2。
何も無い場所に用は無い。速やかに墜落船の場所に行こうとした彼らの前に、人影が現われた。
「ねぇ、回収屋さんの人たちじゃろ。頼みたいことがあるじゃけんど、聞いてもらえんかいやぁ?」
見ると、ワーラットっぽい風貌をした、鼠の氏族であろう獣族の子供達だった。
「・・・頼まれごとによるでおじゃるな」
「うちたちは牛人畜の番をしとるんじゃけんども、牛人畜が逃げ出してそこの洞穴に入って行ってしまってなー。あそこは1週前から、核武僧*8が篭って修行しとるとこなんじゃあ。はよう連れ戻しにいかんと、族長に叱られてしまうけんど、うちらはまだ戦い方がわからんで。兄ちゃんらー、うちらの牛、連れてきてくれんかー?」
「・・・悪いが、我々も核武僧は怖い」
「子供達よ、人生はままならないものなのだよ。残念だが、自分達でなんとか・・・」
「・・・イヤ、皆ちょっと待って。あの子の首の所を見るんだ」
断ろうとした彼らを止めるように、トリウムが言った。その言葉で振り返った彼らの目に止まったものは、子供達の1人が首に提げているものだった。あれはまさしく回収許可証。
「子供。その首に提げているものはなんじゃ?」
「これはこないだその辺で死体が持っとったのを拾ったんじゃー。格好いいじゃろー。へへへ」
「・・・少し待つでおじゃる。麿たち相談をするでおじゃるから」


「回収許可証って有効期限とかあるのかな?」
「無いですよ。買ったら許可証がある限り、半永久的にその人の物。」
「てことは、あれを貰えばタダで墜落船が手に入るわけだ」
「子供や。核武僧の人数は何人でおじゃるか?」
「1人じゃったよ」
「1人か。・・・1人なら何とかなるかもしれん」
「やるか」
「うむ」


「子供や。そなた達の頼み、聞いてやらんでもない。その代わり、そなたが首に提げておるその板切れを貰えぬだろうか?」
「えー?わし気に入っとうのに・・・。」
「しかし、ぬしらも牛人畜を連れて行かねば困るじゃろう?」
「そうじゃなぁ。叱られるのはいやじゃあ・・・。わかったわ、これ兄ちゃんらにやる。そんかわり、牛連れてきてくれなー?」
「うむ、麿に二言はないぞよ。三言はあるがの。」


1050週 1日目 フィールド3-1 洞穴
洞穴の中に入っていくと、奥から確かに時折弱弱しい牛の鳴き声が聞こえてくる。中は一本道で、進んでいくとすぐに開けた場所に出た。そこでは話の通り、1人の核武僧が黙々と型の練習をしていた。それから端っこの方に、牛人畜が倒れている。時々動いているから、まだ元気ではあるようだ。
「むっ・・・お主等、何用だ?ここが我の秘密の鍛錬場だと知ってのことか?」
「自分で秘密って言っちゃったよこの人」
「麿たちはそこの牛を連れ戻しに来ただけじゃ。気にせんでおりゃれ。」
「ふむ・・・まぁいい。ここで会ったのも何かの縁。1つ稽古をつけさせてもらおうぞ。断りは聞かん。『人・即・殺』が我らが掟。いざ勝負!!」
「勝手なヤツだの。まぁこちらも元よりそのつもりじゃ。」
かくて初戦闘である。6対1なので、PC側が数で圧倒的に有利。しかし核武僧の拳は核融合を引き起こし、戦場の汚染度を上げる。このゲーム、その場の汚染度が高いと毎ラウンドダメージを受けるのだ。
戦闘開始後、核武僧は素早く移動し、手近にある高所マスを殴って汚染度を上げようと試みる。しかし出目が振るわず、試みは失敗。
PC側は前衛陣3人が前に出る中、後衛の非戦闘要員であるトリウムがハザード*9を探し、ハエトリグサ男爵が核武僧のスペックを鑑定する*10。その結果、この洞穴にはハザードもアイテムも無い模様。対して核武僧のスペックだが、恐ろしい事がわかる。なんと『爆死』*11の変異を持っているのだ。戦慄する一同。出来れば遠くから射撃で仕留めたいが、前衛陣は基本的に格闘戦仕様だ。それに、手を抜いて戦える相手ではない。仕方が無いので、前衛には爆死のダメージを受けて戦闘不能になってもらうことになった。
前衛陣が核武僧と接敵すれば多勢に無勢、特に歯車童子の脅威の8回攻撃が鮮やかに核武僧を切り刻み、あっという間に裁断された。
そして、爆死する核武僧。GMが振った1D12の出目は10。一般的なPCの生命点上限は6である。当然至近距離にいた歯車童子ヒルッチは2桁ダメージなどに耐え切れるわけもなく、同時に倒れた。
しかし、戦闘が終了すると同時に生命点が1の状態で蘇る1人と1匹。このゲーム、戦闘不能になるだけではキャラクターは死なない。よほどのことが無い限り、PCは死ににくいゲームなのだ。問題は、その「よほどのこと」が頻繁に起こるということなのだが。
ともかく核武僧は倒した。爆死した核武僧の肉片を集める一同。墜落世界では、死体は貴重な収入源だ。特に核武僧の死体は高く売れる。たとえミンチになっていても。
核武僧の所持品と死体を拾い集めた一行は、倒れていた牛人畜を台車に乗せ、洞穴を後にした。
「わー、うちらの牛じゃあー。おじさんらありがとうなー。」
「なに、気にするでない。それでは代わりのものをもらおうかの。」
「うん。じゃあこれあげるでなー。」
子供はニマニマと笑顔を振りまきながら回収許可証を一行に渡し、何度も何度もお礼を言って、彼らの居住地に帰っていった。それを見送った後、貰った回収許可証を確認する一行。


「回収許可証 船名:トイザラス 墜落位置:フィールド3-3」


「またなんだかイヤな名前の船だ・・・」
「面白ハザードが満載な予感がひしひしと・・・」
「まぁ近いし特に問題は無いのだが・・・」
この世界では、嫌な予感は常にどこかからしてくるものだ。それを敏感に察知し、冷静に対処する事が長く生き延びる事に繋がる。もっとも、嫌な予感のするものが多すぎて、大抵の人は感覚が麻痺していくのだが。
中合わせの死に怯える一行を眺めながら、GMは1人ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべていた。


つづく。

*1:墜落地帯と一般街区を分ける巨大な壁であり、中で人が生活もしている建造物。形が上下に広いだけで、一般的な街と変わりない。

*2:強化装備。このゲームは経験では成長せず、資産を買うことで成長する。

*3:墜落世界の通貨単位。エネルギーユニットの略。きっと液体だ。

*4:廃棄物と粘菌を綺麗にブレンドして成長させた結果自然発生した、大型のランダムエンカウント生命体。遭うと死ぬ。

*5:今の世界を形だけでも治めている政府。

*6:墜落世界には年と言う概念が無い。

*7:壁街から中心の墜落地帯までは12のフィールドに分かれている。墜落地帯に近ければ近いほど、環境汚染度も高い。

*8:体内で核融合を起こす事でエネルギーを生み出す事が出来るイヤ生命体。修行大好き、戦闘大好き。

*9:トラップの事。

*10:鑑定判定に1成功するだけで、敵のスペックがわかるというハウスルールを使用している。

*11:死ぬと周囲8マスにいる全員に1D12点のダメージを与える。